「助けてください……」―。
夫はポルポトに粛清され、自らは職を失い、無一文でたどりついた39歳の女性は、 肝硬変の末期。懸命の手当ての甲斐あって、数日後笑顔が戻った彼女の瞳に、喜びの 涙が光っていました。
どんなに貧しくても、誰であっても、ここでは安心して適切な処置と温かい看護を受けられる―。
グラハム・オグル院長から届いた、現地レポートをお届けします。
この度、8月11日、当シアヌーク病院に初めて入院病棟が開設されました。
これで24 時間のサービスがフルに可能となりましたので、スタッフ一同さらに意欲を燃やしています。以下、皆様に当病院8月度の活動報告をさせていただきます。
当病院に入院病棟が開設されたことで、今後は、医師や看護婦が24時間常駐することになりました。中でも非常に有能な12 人の医師たちは、病棟での診察や夜勤に慣れるため、6週で一巡するローテーションを組んで対応することにしました。現地出身の医師や看護婦は、おおむね、患者さんの病状の軽重を推し量ったり、また体調の変化を正しくチェックして適切に対処することが、非常に不得手なようです。
この度の新病棟の設置によって、現地の医師や看護婦が抱えるこうした問題点は、よりいっそう際立ってきました。
私たちは日頃から職員に対して、薬剤の使用や流動食の処方は合理的かつ注意深く行い、不測の事態には的確な判断のもとに迅速に対応し、また書類の管理は徹底するよう、特に注意を促しています。キャメロン・ギフォード医師(診療担当)とローリー・フェルカー氏(看護担当)の、この点に関しての職員への徹底ぶりは実に見事で、現地カンボジア人のスタッフは熱誠と勤勉さをもってこれに応えております。病院には、ぜんそく、HIV /AIDS ウイルス、結核、貧血症、心臓/腎臓病、肺炎といった、さまざまな機能障害に苦しむ患者が入院しています。病院側からあたたかい心遣いと、行き届いた看護を受けた患者たちは、大変感動し、それに対してさまざまな形で感謝の気持ちを表しております。
この8月には、のべ5,401人の患者さんが来院されました。治安上の制約もあって、患者さんの数は幾分少なめのままで推移しています。
8月上旬、経験豊富なスタッフの多くが病棟勤務となり、また救急処置室でスタッフが実習する必要から、外来担当のスタッフの数が減り、その分患者さんの待ち時間も長くなってしまいました。
8月下旬、待ち時間を少なくするため、症状の軽い患者さんを屋外で診察する「ファースト・トラック」システムを導入しました。情熱的で専門的見識の高いデイブ・トレバー医師によって運営されているこのシステムは、非常に有効な方法であることがわかっております。これでより多くの患者さんを治療をすることができ、また救急処置室での混雑も緩和され、重度の患者さんに対しても、より集中的な診察が可能となるのです。
グラハム・ガムリー、スザンヌ・ガムリー夫妻とその子どもたちがボストンからやってきたのは、昨年の8月のことでした。グラハムは早々と外科長の職を引き受けました。手術室に取りつけるレトロ調の器具はもう少しで完成するところです。
また外科手術を始めるのに必要な、大がかりな手術機器は、船便で11月上旬に到着予定です。
そして当病院には、やっとレントゲン検査をする機能が備わりました!ボブ・コロン氏は、現地で採用された、有能なフィリピン人のレントゲン技師です。彼は日本から寄贈された携帯用の医療器具を用いて、レントゲン科を始めました。彼は手動式の処置器具や、急ごしらえの暗室もつくりました。これで院内で大量に検査用のフィルムを現像できるようになります。今年後半にはさらに、オーストラリアからレントゲン検査機器と自動処置器具を寄贈されることになっております。
サンドラ・ツァイ氏は、カナダ・トロント出身のベテラン薬剤師ですが、彼女は(大部分は自費で)我々の病院を今年前半に訪れ、私たちに貴重なアドヴァイスをしていただきました。その後、彼女は、カナダ病院薬局協会に、当病院を訪問されたことについての報告をされ、そのレポートでE ・アミー・エリック賞を受賞されました。
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