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1997 11
マンスリーレポート
キャメロン医師が病院長に
 オグル前病院長の転勤、開院一周年記念行事、シアヌーク病院の国連エイズキャンペーンへの参加など、通常業務外の行事が目白押しの11月でしたが、診療および研修活動は順調に展開されました。

 11月中の来院患者数は、のべ5,003人に上りました。入院施設は、これまでに100名の患者を収容、治療にあたってきました。これらの患者の多くは、先進国であれば集中治療室で手当てを受けていたであろうほどの重症でしたが、彼らは治療費や薬品代が無料で治療を受けられたことに、大変感謝されていました。現在、当病院のスタッフ総数135 名のうち、カンボジア人は医師が20 名、看護婦が38 名を占めています。彼らは、病院側が提供しているサービスや、家族を養うに十分な給料を支給されていることに、大変満足されています。

 医師および看護婦の研修プログラムも予定通りに進められています。専門的には、当病院医師を対象とした呼吸器系医薬品に関する講義が、入院している多くの肺病患者に対する臨床講義により実施されました。超音波診断撮像の研修も続行中であり、またX 線ユニットは特に骨折や肺病診断にフル回転しています。このたび、スザンヌ・ガムリー氏とソク・クン氏により、広報部が新設されることになりました。彼らは、寄付された方々からの要請に応えたり、今後の募金キャンペーンの展開などを担当いたします。多くの方々の寄付によりまかなわれている当病院にとって、非常に重要な部門となるわけで、今後の資金確保のために大きな力になってくれるでしょう。

患者の物語
ネム・ブナーさん
 ネム・ブナーさんは58歳で、重症の血液バクテリア感染で当病院に収容されてきた、病み衰えた女性でした。彼女は非常に貧しく、また病状が著しく重く見えるために、プノンペンの他の病院では、ことごとく診療を拒まれてきたそうです。運ばれてきた当初の48 時間は、生命の危険な状態が続いていました。しかし、適切かつタイミングよい投薬が効を奏し、とりあえず一命を取り留めることができました。そのことに大変感謝されていました。
 検査の結果、彼女の感染は、重症の結核により生じた免疫系の機能低下が原因だったことが判明。しかし、やせ衰えて病状が進んでいた体は、すでに食事も受け付けなくなっていたのです。IV 栄養補給を行っても、手遅れ状態でした。入院してから12日後に、彼女は死去しました。

 しかし、ご家族は、我々が精一杯努力したことに心から感謝してくれました。私たちは彼女の病気を治癒させることは叶いませんでしたが、愛情をもって彼女を受け入れ、できる限りの対応をさせていただいたと思います。彼女は、最期まで自身に誇りを忘れず、立派に生き抜きました。それは、私たちが最善を尽くすに十二分に値する姿でした。
 彼女の治療は、素晴らしい成功だった、そう私は確信しています。死の直前、私の目をじっと見つめていた彼女の眼から感謝の想いが溢れ、成功でしたよ、と語りかけているようでした。


ヘング・ソヴァンさん
 28歳の兵士であるヘング・ソヴァンさんは、これまで私が出会ったカンボジア人の中でも一番大きく、身長150 センチメートルに対して、体重が105キロという巨漢でした。衰弱して歩けなくなった彼は、汚れた担架にのせられ、地方の村から当病院に運び込まれてきたのです。彼は高熱に冒され、片言しか話せなくなっていました。肝機能不全による黄疸のため、白目と皮膚は黄色化しています。まだ若い彼の奥さんは、もう助からないと、死を覚悟していました。

 診察の結果、重症のマラリア(死亡率10 %)に感染していることが判明、早急に治療を開始しました。血圧を保持し、腎機能を守るために大量のIV 液を補給せねばなりません。血糖値の降下は続いていたため、低血糖性昏睡に陥るのを防ぐために、特殊な糖分の補給が必要でした。幸い、確保していた適切な薬品があったのと、高品質の医療技術が活かされたおかげで、5日後には、若い奥様といっしょに、無事退院することができたのです。彼は、私がこれまで出会った人の中でも、最も大きく、健康的で、そして力強い笑顔を見せてくれました。
 私たちはシアヌーク病院でのこのような任務を、歓びとしています。

スタッフの横顔
ソチェアさん
 ソチェアは、当初、シアヌーク病院の通訳として働いていました。自分の業務に対する情熱と、学ぼうとする向上心にあふれ、責任感が強く頼りになり、病院職員の教育やオリエンテーションなどにも大きく貢献してくれています。  彼女は、病院でのHIV 予防業務にもリーダーシップをとって尽力し、現在HIV カウンセラーとしての研修中です。また、患者教育やHIV 支援グループなどにおいても、主要な役割を担っています。

 ソチェアの献身ぶりと業務遂行能力は、病院スタッフにとっても理想的な模範になっています。きっと新たな任務の下でも、さらに成長を続けていくことでしょう。

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