ホープ派遣団が当病院スタッフを激励
第3回ホープ・ヘルス・コーポレーション年次会議が、今年は「アジア圏エイズ蔓延阻止」をテーマに香港で開催されました。
カンボジアはアジアの最速HIV 感染国という汚名を被り、すでに成人の2.7 %が感染しているといわれます。その意味で、カンボジアチームとしてシアヌーク病院から6 名という特に多数の出席者を得たことは適切で、他にアフリカ、オーストラリア、カナダ、中国、インド、韓国、フィリピン、そして米国からのメンバーが一堂に会しました。
会議にはカンボジア国家エイズプログラム委員長のテイア・ファラ医師の一団がゲストとして招聘され、テイア医師は「カンボジアHIV/エイズ感染に対する病院支援および治療」、そして発展途上国における治療ジレンマについて講演。医療シンポジウムでは、ハーバードエイズ研究所のケン・マッキントッシュ医師、ボストン小児科病院のマックス・エセックス医師、南アフリカ・ソウェトエイズプロジェクトのマーク・オッテンウェラー医師など、HIV/エイズ予防及び管理分野の世界的権威による提案に対して、強力な学術的合意が確認されました。
当病院からは、キャメロン・ギフォード内科部長と、ギリアン・ホールHIV/エイズ部長が、カンボジアでのエイズ対策について発表。劇的なスライドの上映が参加者の目を釘付けにし、家庭や社会を崩壊させてしまうこの難病の実態が明らかにされました。 香港での会議後、372 名の参加者は、引き続きフィールドワークとしてフィリピン、中国およびカンボジアの歴訪へ。
184 名の派遣団が当病院に到着、そこから小グループに分かれ、市内の様々な施設を訪問しました。彼らは患者治療やスタッフ研修を支援し、またカンボジアにおける、膨大な医療需要のすさまじさを初めて目の当たりにしたのです。
さらに、エイズ患者たちの自宅や、他病院の訪問も行われました。シアヌーク病院ではエイズクリニックが開かれ、HIV/エイズに伴う急性病に関する講義を実施。また、エイズ管理、外傷治療の原則についての討論や、そして5 人の外科医と麻酔医が種々のテーマで、当病院スタッフや招聘ゲストと意見を交わしました。派遣団一行は、患者治療や処置手順の開発を支援してくれました。どの団員も気さくで親しみやすく、その向学心や支援意欲の大きさには目をみはらされました。派遣団の方々と、当病院のカンボジアや外国スタッフが協力し、一つの目標に向けて団結される情景には、心動かされるものがありました。
プノンペンでの経験について 派遣団員の感想
▼ 「この国ほどの深い苦しみは見たことがない。どの人も絶望する理由をもっているが、希望もあるはずだ。彼らの物理的な要請に応える医療を支援したい」
(ニール・ドナフュー医師、フィラデルフィア)
▼ 「スタッフの慎ましさと向学心に感銘を受けた。私が教えたことよりも、もっと多くのことを教えていただいた。この病院の実務は、効率的かつ効果的な方法で、すべて患者の立場を第一に考えてなされている」
(テイム・カミングズ医師、米)
▼ 「子供たちの貧しさを目の当たりにして、いかに自分たちが恵まれているのか、そしてアメリカの豊かさを痛感させられた。毎日来院する350人の患者にとって、この病院が唯一の希望なのだろう」
(ゴードン・ファーグソン、ボストン)
▼ 「スタッフは、その医療知識、心と人間性で選ばれている。今回再訪して、彼らの教養、自信、そして研修内容の運用能力が格段に向上していることを知った。シアヌーク病院は、真実の医療に対する指針であり、道程になっていると思う」
(グラハム・オグル医師、前シアヌーク病院長)
▼ 「ここに勤務する使命を与えられたこと、そして私とご一緒に奉仕されている方々に、感謝したい。派遣団は、当病院スタッフに多くのことを授けてくれた。同じように私たちスタッフも人々に授け、知り、そして激励できるのだということを教えられた。スタッフ一同、皆さまを目標に努力したい」
(キャメロン・ギフォード、シアヌーク病院長外科学会での発表)
当病院外科プログラムが、プノンペン大学医学部の後援により国際医学外科学会で評価されました。リカルド・デ・ラ・コスタ医師が、シアヌーク病院で行われた最初の400 件の手術の概要を説明、月々増えていく件数と、合併症の低率が出席者の注目を集めました。グラハム・ガムリー医師が、脚にできた大きな骨肉腫治療のために行われた切断手術の複雑な症例を発表、またルース・トウーテイル医師は、化学療法や放射線療法が効かない局部進行した乳ガンの治療管理について、貴重な提言を行いました。
当病院の3名の外科研修生も会議に出席し、国際的な医療共同体の場に出て、また仲間と交流できる貴重な機会を得たことに喜びを表していました。
病院スタッフにとって、このような会議に参加できることは栄誉であり、カンボジアにおける外科医療の発展により大きく貢献したいと願っています。
客員物理療法士
ダニエラ・ブラウヒャー氏は、当病院における物理療法の需要を査定するために2 週間滞在し、スタッフや患者との共同作業に尽力されました。
ダニエラ氏は、シカゴのノースウェスタン大学で物理療法を学び、9 年間にわたり小児科と整形外科、および外傷治療に従事。過去3 年間は、イタリア・ミラノの300 ベッドの整形外科病院に勤務してきました。
「ここプノンペンで患者さんやスタッフと働く機会をいただいたおかげで、物理療法士として成長できたと思います。多くの患者の病状は深刻で、スタッフの方々も、これまで物理療法の研修を受ける機会がほとんどなかったようで、私にとっては非常に困難の多い環境でした。過去13 年間のキャリアで得た技術や経験を、総動員しなければなりませんでしたから。病院のほぼあらゆる部門の患者さんにとって、運動療法は効果的です。医療一般、整形外科、四肢切断治療、そして神経治療などの分野で、患者の速やかな回復に寄与し、より早く退院できるようにするため、カンボジア人物理療法士や看護婦の育成が急務になっています」
こうした総合的な査定業務と共に、ダニエラさんは入院病棟の看護婦に対して、療法技術の指導時間もとってくださいました。これが多くの患者の回復時間短縮という成果となることが期待されています。当病院にとって、物理療法研修を今後も体系的かつ総合的にに継続していくための貴重な財産となることでしょう。自らの2 週間の休暇を犠牲にして、その経験とエネルギーを捧げてくださったダニエラさんの意志に、謝意を表します。 |