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1999 7
マンスリーレポート
手術数が1000件達成
手術数1,000件に

 1998 年1 月に外科部を開設して以来、わずか1 年半の間に実施された手術が、このほど1,000 件に達しました。

 外科部は、病院内の他部署に謝意を表し、この道程に達したことを祝しました。その手術内容も、世界最高レベルの外科病院で扱う症例と同等の難度のものが多く、それを短期間にこれだけ多数実施するには、部署間のチームワークが不可欠だったからです。
 手術スタッフも、発足時わずか5人でしたが、現在は13 人にまで増えています。現在、一日平均4 〜5 件の手術をこなしながら、特に医師や看護婦に対して外科理論および臨床研修にも力をいれています。骨肉腫の摘出や四肢の再建、胃切除や喉頭がん、また多くの地雷犠牲者の処置など、大手術も少なくありません。外科病棟スタッフは、患者の術後管理に非常に優れ、慎重な病状監視や合併症発生阻止のための介入などに、力を尽くしています。

 これだけのレベルの研修と治療が実現できているのも、貧困患者の救済のために財政的また外科物資をご支援くださったドナーの皆様のおかげであり、一同あらためて心より御礼申し上げる次第です。


救急車の寄贈

 大阪市のセイケン医療株式会社のタガワ・ヨシオ社長より救急車が2 台寄贈され、このほどカンボジアに到着しました。これらは、東京所在のサイド・バイ・サイド/ ザ・ファミリーというキリスト教福祉団体に贈呈されたものでしたが、この団体より当病院で使っていただけないかという問い合わせをいただいたものです。
 これらの救急車は日本製で右ハンドルのため、当初は輸入許可が下りませんでした。しかし、厚生大臣および運輸大臣と討議されたフンセン首相は、最終的にその人道的価値を承認、輸入許可を出してくれたのです。

 シアヌーク病院が一台を所有し、一台は日本の著名な写真家のイズ・ケンロー氏が設立したシエン・リープ所在のアンコール・小児病院に寄付されることになりました。
 うれしいことに、さらにもう一台の救急車がタガワ氏より贈られるとのことで、これは厚生省を経て地方の保健局に寄贈される予定になっています。


ソク・ファン医師とクリストフ・ベンドレック医師

 シアヌーク病院、特にHIV/エイズ部が、朗報に湧きました。ソク・ファン医師が、ドイツのコローニュ大学病院に短期留学することになったのです。彼は、カンボジア・プノンペンの保健科学大学の皮膚学・性感染病学の上級講師であるクリストフ・ベンデイック医師とともに、7月29 日にプノンペンを発ち、ドイツに向かいました。ベンデイック医師は、1 年間にわたり、自らの時間を割いて、当病院で皮膚学研修クリニックを週に2 回開き、スタッフの指導にあたって来られました。彼によれば、このクリニックで診断や患者管理についてカンボジア人内科医を指導しているときに、過去最も困難な皮膚疾患の症例に遭遇したとのことです。

 1998年、彼のドイツ人の知人であったコローニュ大学の感染病専門医であるベルンド・ザルツバーガー医師がプノンペンを訪れ、HIV/エイズについてご講義されたことがきっかけとなり、今回の短期留学が実現したものです。ベンデイック医師、ザルツバーガー医師、そしてデユッセルドルフ所在のシュミッツ・シュテイフングエイズ基金のご支援に、厚く感謝申し上げます。この貴重な体験は、彼の知識と経験を深め、帰国後同僚にその会得した財産を分かち与えてくれることでしょう。

 ベンデイック医師曰く、
 「長期的な視点から価値ある医療を継続してゆくためには、スタッフ研修が必要不可欠です。コローニュ大学病院のご協力をいただいて、シアヌーク病院スタッフが現地で研修を受けられるようになったことを、大変うれしく思います。病院側のお力添えがなければ、今回のような外国研修のチャンスは有り得なかったでしょう」

 ソク・ファン医師は、ドイツで6 週間の研修を受けられることを、とても楽しみにしています。彼は、「本当にうれしくて、いまだに信じられません。ベンデイック医師とは、なんども症例について議論を重ねてきた間柄です。外国で、HIV/エイズに関する臨床知識・技術を研鑚できることは、かけがえのない貴重なチャンスです。この経験を、必ずこのカンボジアで活かしていきます。そして、今後も両病院が、互いにより多くの情報を共有できるようになれば、と願っています。シアヌーク病院、特に内科部長のキャメロン・ギフォード医師、研修中私の担当業務をカバーしてくださるギリアン・ホール医師、そしてガムリー医師に大変感謝しています。この旅行に今から胸躍らせています」


寄 付

 ボランティアで当病院に支援にきてくださっているビル&キャロリン・ウェスター医師夫妻を通じて当病院の活動をお知りになった、ハワード&セルマローゼンさんご夫妻からいただいた財政支援に、心より御礼申し上げます。彼等のご支援により、カンボジア人医師1 人と看護婦1 人を当病院にて研修を受けさせるための給料を提供することができます。
 また、先般いただいたシャーランド・ブランチャードさんからの寄付金により、当病院で看護婦1 人が一年間研修を受けられることになります。

患者の物語
「重度の腎感染症から回復」 コム・チャンナさん
 コム・チャンナさんは、15 歳の少女で、身体の異常な膨満を訴えて当病院に収容されてきました。彼女は、1 年前に衰弱のために地元病院に入院してベッドでの生活を送りましたが、症状は改善されませんでした。診断検査の結果、腎臓が感染症に冒されていることが判明、そのために肝臓も悪くしていたのでした。投薬と腎機能制御を組み合わせた治療を施したところ、チャンナさんの体重はまもなく正常に戻り、全身にも精気が蘇り、目覚しい回復を遂げたのです。

 チャンナさんは、インタビューに答えて、
 「休みなく私を介護してくださった医師、看護婦の皆様、本当にありがとうございます。皆様のお力のおかげで、今ではとても元気になりました。ここ2 年間、母と共にいくつもの伝統治療家を訪ね歩き、与えられた薬はすべて服用してきましたが、日を追うごとに症状はひどくなり、もう死ぬかもしれないと覚悟していました」

 彼女の母は38 歳、カンポン・チャム県で米作農婦をしています。
 「お隣さんから、シアヌーク病院で素晴らしい治療を受けたと聞いて、仕事を打っ棄って、すぐに娘を連れてきました。3 人の娘と二人の息子がいますが、この娘が3 年生のときに、病気が悪化し、通学できなくなってしまったのです。シアヌーク病院はとても清潔で、こんな素晴らしい治療を無料でしてくださるところなんて、初めてでした。この病院は、どんな貧しい患者でも、すべて受け入れてくれます。娘もすっかり元気になりました。誠心誠意、娘のために尽くしてくださったスタッフの皆様、本当にありがとうございます」


「胃がんの全摘手術に成功」 キム・ライセムさん
 48 歳の女性であるキム・ライセムさんは、胃がんを患っていました。この1 年間は胃上部痛に苦しみ、食べてもすぐに吐いてしまっていたそうです。以前、プノンペンの他病院に入院していたときに、内視鏡検査の結果、胃がんと診断されたそうですが、貧しくて手術費用を払えないために、退院させられたとのこと。その3 週間後にシアヌーク病院を訪れ、無事胃がんの全摘手術は成功。彼女の症例は、カンボジアでは大変稀なケースでした。来院までに治療を受けられないために、手術してもすでに手遅れになっている胃がんが多いのです。さらに、彼女の手術では、胃とすい臓周辺のリンパ節も切除し、ガンの再発の可能性を最小限にとどめる処置を施しました。術後、彼女は食事ができるまでに回復しましたが、切除手術により胃が小さくなっているため、食事は何回にも分けて少量ずつ摂る必要があります。

 インタビューで、キムさんは次のように語りました。
 「カンポン・チャム県から2 時間かけて来院しました。そこで私は夫、8 人の子供と暮らしています。薪を切って1 日に2 ドル稼ぐのが精一杯で、子供たちを学校にやるのは大変でした。しかもこの1 年間、私はろくに話すことも食べることもできない状態が続いていました。農場を売って民間伝承薬を買ったのですが、一向によくなりません。皆様の真心こもった手当てを受けられた私は、本当に幸せです。私たちのために尽くしてくださるこんな素晴らしい病院がカンボジアにできたことに、感謝しています」

スタッフの横顔
「ボランティア医師が応援に」 コーネリア・ヒーナー医師
 スイス・チューリッヒから訪れた一般外科のコーネリア・ヒーナー医師は、昨年2 週間にわたって当病院に滞在されましたが、このたび、外科チームの一員として協力してくださることになりました。彼女は、胃、すい臓、腸など腹部がんの大手術の経験が非常に豊富です。また、胆嚢や肝臓病の手術も多数執刀されていて、特に手術を要する甲状腺疾患に深い関心をお持ちです。これらの病気は、すべてカンボジアで多発しています。

 ヒーナー医師は、スイスでの12 年間に亘る医学研修時代に、著名なスイス人、ドイツ人外科医の指導を受け、後にアフリカのニジェールで1 年、ルワンダで2カ月間働いています。彼女のこうした他の発展途上国での活動経験が、当病院スタッフの外科研修に貴重な財産となることでしょう。当病院に加入以来、すでに多数の症例を担当され、めざましい成果を挙げていらっしゃいます。


ルット・ライネン医師
 ベルギーからルット医師をお迎えできたことを光栄に存じます。ルット医師は、内科と熱帯病がご専門で、シアヌーク病院内科部に所属されることになりました。夫のウィムさんと共に、6 年間にわたって『国境なき医師団』に勤務し、アフリカ各地で無料医療奉仕に尽くされてきました。ウィムさんは公衆衛生学と経営学の分野で医師号を取得されており、カンボジアには国境なき医師団の一員として派遣されています。

 地方病院を昨年視察されたのち、
 「シアヌーク病院の医療レベルと患者を扱う雰囲気に非常に深い感銘を受けました」
と語るライネン医師は、ご主人との間にトーマスくんとメラニーちゃんという二人のお子様がいらっしゃいます。主婦業もこなさなければならないので、パートタイムでも当病院を支援してくださる時間がとれたことを、大変お喜びです。彼女は、重病治療や、熱帯医学の経験が豊富で、現在は特に集中治療室で活躍されています。6 月から彼女の協力が得られているおかげで、内科チームの医療能力も大きく飛躍しています。


全スタッフ
 6 週間にわたる倉庫引越し作業のハードワークをこなしてくれたことに謝意を表して、今月は全職員を最優秀スタッフとして称えたいと思います。酷暑のなかを、病院の生命線である医薬品や機器、備品が詰められた数千個もの箱を新しい倉庫へ移動させる重労働に、力を合わせてくれました。

 この膨大な作業の段取りと指揮をとってくれたのは、ローリー・フェルカー看護部長と、モン・ソケア機器管理主任です。特にソケアさんと二人の部下のフオン・モニーさんとイーク・ゴウンさんは、病院の全部門の機能に支障を来たさないように必要な備品を保持しつつ、新しい倉庫を整備するという難事を見事に休みなくこなしてくれました。また、看護・内科部のスタッフたちも、これら二つの倉庫で午後の時間を費やして、膨大な手作業に労を厭わず尽くしてくれました。古い倉庫は清掃ののち、18 カ月間にわたって無料で貸与してくれたウィーさんに返還されました。ウィーさんのご厚意に、改めて深謝いたします。

 またこの作業には、在庫の棚卸的な副産物ももたらし、使用することのない機器や備品を他病院に寄贈することができました。需要の高い備品の思わぬプレゼントを受けた病院の関係者は、大変喜び、感謝されていました。

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