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2001 1
マンスリーレポート
エイズ感染禍のなかで

エイズ感染禍のなかで

  悲しむべきことですが、HIVにより命に影響を受ける当病院患者とその家族の数は増えつづけています。しかし、AIDSを伴う重病患者の治療に伴って、予防教育や家庭健康管理にイニシャティブをとることに燃えています。
 カンボジアは、アジア最悪のエイズ蔓延国で、約15万人が感染しており、毎年17,000人〜25,000人の割合で増えつづけています。2000年度には患者増加率が1.5%に達するとみられ、今年末までに21,800人が死亡するだろうと予測されています。わずか65%の識字率、平均通学年数2.5年、貧困、栄養不良、他の性感染疾病の流行、などの負の要因が拍車をかけ、世界最速の患者増加率を生み出してしまっているのです。

 直接的な風俗業従事者のうち、42%がすでにHIVに感染しており、これはアジア最悪の割合です。AIDS患者の40%は女性で、妊娠女性の感染率は2.6%に達しています(厚生省調べ)。このような危機的状況を改善するためには、人々の生活態度や行動を正すための教育とともに、肺炎、結核ほかの感染病などAIDSから派生する二次疾患の治療が必要です。
HIV部の発展において実施してきた革新的業務を率先してきたことを、私たちは誇りに思っています。医師、看護婦およびパラメディカルスタッフを含む専任チームが編成され、ギリアン・ホール医師の指揮のもとに、主任カンボジア人、HIV内科医ソク・ファン医師とネイビー医師、ガク医師の協力により、ガイドされることになります。外来および入院患者へのサービス向上の努力に加えて、これまで達成した実績には、自らの時間を割いて公衆予防教育を実施するとともに、末期患者に対して衣類、付き添い、食料や個人介護を行って励ます、ボランティアを教育する《ボランティア研修プログラム》の設立が挙げられます。

 また、私たちは、香港で開催される《ホープ・ヘルス・コーポレーション会議》におけるフィールドワーク活動で当病院内科医チームと協働する100人の医師、看護婦および他の医療専門家をホストすることを楽しみにしています。この会議のテーマは、《アジアにおけるエイズ予防》《最新情報》で、11月13〜19日にかけて、ハーバードエイズ研究所とホープ・ワールドワイドの共催、UNAIDS、香港エイズ顧問グループおよびユニセフの協賛、南カリフォルニア大学医学大学院、南カリフォルニア太平洋エイズ教育研修センターが後援します。ボランティアによるパイロット・プログラムが、ホスピスや家庭でのエイズ患者を日々支援しています。
英国人家庭医学内科医である当病院のギリアン・ホール医師とホープの現地ボランティアコーデイネーターのチャベリスさんの指揮のもと、HIV支援グループが1年前に発足しました。その目的は、患者たちが率先してその同僚たちを教育することを奨励し、また患者相互の支えあいを補助することにあります。
プノンペンの街路や近隣でのエイズ覚醒キャンペーンの効果は、世界エイズデーキャンペーンの一環として行われ、この11月で4000世帯に達し、過去9ヵ月にわたるボランティアの継続的努力の励みになってきました。彼らは、毎日、ホスピスや患者宅の訪問をつづけました。

 今年、このグループで働いている常任ボランティアのうちの3名が、世界保健機構の財政援助を受けているエイズ家庭介護チームパイロットプロジェクトのメンバーとして選ばれました。これは、共同体内におけるエイズ患者にたいする介護と支援治療の提供を改善するためのカンボジアにおけるあらゆる家庭介護において、最初のイニシャティブとなりました。
彼らはまた、世界銀行から、患者たちの物理的精神的需要をみたすための支援を援助するために、ボランテイアにHIV/エイズに冠する知識と介護の研修を支援するための資金を提供していただいています。教育資料は、当病院のガク医師、ネイビー医師により開発されたものです。この新ボランティア研修プログラムの開幕スピーチは、国立エイズ・プログラムの委員長であるテイア・ファラ医師が行いました。世界銀行、CAREインターナショナル、厚生省、ワールド・ビジョン、およびHIV/AIDSコーデイネーション・コミッテイーの他のメンバーをゲストに迎えてのレセプションが、ボランティアの研修セッションのスタートに先立って、行われました。

 この14週間にわたる研修プログラムによって、公衆予防教育や末期患者に対する介護に自らの時間を割いて献身するボランティアの方々は、当市にたいして最大の影響力をもつようになるでしょう。


外科研修プログラムが認められる…
3年間の研修プログラムに、大学および ベルギー給付外科医が参加

 プノンペン大学および厚生省首脳による会談の結果、当病院外科部長のグラハム・ガムリー氏により開発された3年間にわたる外科研修プログラムが主流として受容されることになりました。
 「1年間ここで働き、病院の同僚からの情報などから、我々は当病院スタッフの知識に基づいて構築され、この病院で実際に発生している深刻で重い病状の症例に適用できるプログラムを開発しました」

 この大学は、彼らの外科研修生のうちの一人を当病院に6ヵ月間のローテーションで滞在させたいと要請し、またベルギー支援による外科研修プログラムは毎週当病院に半日間の指導を行う研修生を6名派遣しています。

患者の物語
コウ・ファリさん
 50歳の女性であるコウ・ファリさんは、4ヵ月にわたる下痢、食欲不振、激しい体重減少を患った末、救急治療室に運び込まれてきました。彼女のリンパ節は肥大し、間欠的高熱を発し、口には白色の痛みを伴うできものができていました。これらはすべて、HIV感染の典型的症状です。脱水症状がはげしく、下痢のために危険なほど塩分を喪失していました。ファリさんは内科病棟に入院し、生命維持のためのIV液を供給され、身体塩分は検査室からの正確な結果にもとづいて補正されました。検査結果によれば、ファリさんはアミーバ性赤痢(微小アミーバが腸を侵す病気)でした。これは、汚染された水や食物から感染する、カンボジアでは日常的な寄生虫感染です。

 看護スタッフは、苦痛の多い予備HIV検査カウンセリングと血液採取の間、彼女をきわめて献身的に支えました。シアヌーク病院は、患者が検査結果をきいたときのショックを和らげて支えるHIVカウンセラーが待機しています。

 ファリさんは下痢と赤痢の処置を受け、ここ数ヵ月間で最高の気分で退院していきました。彼女は、自分が受けた治療にたいへん感謝し、7歳と10歳の子供を養うために、街路で食べ物を売って働くことができることを喜んでいました。彼女は夫をエイズで昨年亡くしており、現在子供たちを学校にやるだけの経済的余裕がないそうですが、子供たちの面倒をみる時間ができることに希望を抱いていると語っていました。

 この症例は、カンボジアにおける患者治療において、いくつかの重要な面を表しています。HIV感染は、非常に頻繁で、アミーバ性赤痢などの他の感染病に対する免疫力を低下させることで、発見されることが少なくありません。しかし、病状は遥かに激しいものとなります。HIV患者は、これらの関連疾患の治療を受けることができ、数ヵ月間、または数年間、質の高い生活を過ごすことができます。

 介護における優秀さとは、慎重なモニタリング、投薬のみならず、精神的な痛みを伴う傷から患者たちを支援することをも含みます。また、品質の高い患者治療には、有能な、応答性のたかい検査室が、正確で信頼性の高いデ−タを提供し、それに基づいて医師が正確な診断を下せることが不可欠です。この症例でみられた優れた成果は、まさに医師、看護婦、カウンセラー、そして検査室スタッフたちのチームワークと協力の賜物であるといえます。


ノイ・ヘンさん
 ヘンさんは44歳の女性で、12日間にわたる激しい頭痛、発熱、嘔吐に苦しんだ末、コンポン・チャム県から5時間かけて訪れました。個人クリニックでは、抗生物質、抗結核薬、ヂアゼパムおよび数種類のAnalgesicsから成る混合薬を投与されていました。しかし、症状は悪化の一方で、衰弱とめまいで歩行困難になるほどでした。

 救急治療室での腰椎穿刺および、他の検査の結果、極めて珍しいクリプトコックスneoformansという微生物による感染が発見され、これが髄膜炎を引き起こしていたことが確認されました。この細菌はHIV感染患者に見られることが多いのですが、ヘンさんは夫を亡くしてからかなりの年月が経っていました。HIV検査も陰性でしたので、早期の完全治癒が期待されました。

 内科病棟に入院したヘンさんは、投与初期にいくつかの激しい副作用を伴う、アンフォテリシンBの投与を受けました。こうして、ついに感染状態に改善が見られるようになり、20日後には元気になって退院できたのです。今後、数週間は経口薬の服用をつづけ、外来に通院することになります。
死を招く可能性もあるこの病気からのヘンさんの驚くべき回復に、我々スタッフは大変勇気づけられました。ヘンさんの18歳になる娘さんは、
 「患者に向かって微笑み、励ましてくれるスタッフのいる病院を初めて見ました。ここにいるだけで、とても幸せな気持ちになれました。母の命を救ってくださった皆様の介護と治療に、心からお礼申し上げたいです」

スタッフの横顔
コン・プテアニー医師(放射線部
 プテアニー医師は、1年前に医師として当病院に採用され、以前研修していた超音波放射線学をさらに深めることを希望して、救急治療室および内科病棟に配属されました。超音波およびX線の需要が増大するにつれ、プテアニーさんはこの分野により多くの時間と労力を割くことを迫られ、二つの責任を負うことになりましたが、彼はつねに積極的に感謝の心でそれらをこなしてくれました。
 プテアニーさんは、その後放射線部の管理任務を依頼されるようになりました。この任務において、プテアニー医師は、経費を削減し、患者や医師へのサービスと質を向上するために率先してくれました。

 彼は、現在24時間にわたるコールを分担で担当してくれている二人目のカンボジア人放射線技師の採用に貢献してくれ、またさらにX線解析研修も企画してくれました。彼のリーダーシップにより、X線研修ライブラリーが実現することになっています。その資金は、古いX線フィルムを売却することによって調達します。また彼らは、当病院医師たちのために、新しいサービスである、より正確で迅速なX線解析サービスを提供できるように協力してくれています。プテアニー医師は、プノンペンの大学医学部を卒業し、コンピュータ撮像および超音波撮像の研修を終了しています。彼は、すばらしい向上心と探究心を見せてくれています。それは、ここカンボジアでは大変必要な要素です。彼は、当病院の需要により深く関わり、また応えたいと強く希望しており、また同僚たちにたいしては休暇をとれるように配慮してくれています。すべて自らの関わる業務において、彼は明るく、協力的で、かつ謙遜な態度を失ったことがありません。すばらしい業務能力と態度をそなえたプテアニー医師を当病院にお招きできたことを、心からお慶びしたいと思います。

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