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2001 6
マンスリーレポート
抗生物質濫用による耐性増大を憂慮

抗生物質濫用による耐性増大を憂慮

  カンボジアでは、抗生物質の濫用が深刻な問題となっています。数百におよぶ家族経営や小規模の薬局では、抗生物質を含むあらゆる薬剤を処方箋なしに安く販売しています。その多くは最近開発された抗生物質で、強い効果がありますが、慎重に使用しなければ耐性を高めてしまいます。

 カンボジアでは、ふつうの風邪や下痢などの患者は、診療費を節約するために、医者に行かずに、薬局に走ることが一般的です。薬剤師は、簡単な問診だけで、多くの場合には5種類の薬剤、3種類の抗生物質、パラコタモール(チレノール)およびビタミンなどを処方しています。しかし、そうした疾患はビールスにより引き起こされるものなので、抗生物質は効果がありません。

 抗生物質は、バクテリア感染に対してのみ働くからです。残念なことに、ビールス感染している患者は、必要のない抗生物質のためにお金を捨てているのみならず、抗生物質耐性の増大にも寄与しているのです。抗生物質の濫用がバクテリアの抗生物質耐性を高める結果、真性のバクテリア感染が起きたときには、抗生物質は、もはやバクテリアを殺すことも、感染を阻止することもできなくなります。このために、他国では有効な抗生物質も、この国では効かないということが少なくありません。まだ使われていない、最新の強い抗生物質のみが効くわけですが、それらもまた、無差別的に濫用されることによって、やがてバクテリアに対して無力になってしまうのです。

 第二の問題は、抗生物質の副作用の恐ろしさです。クロラムフェニコールは、カンボジアで長く処方されてきたために、すでに効力を失っている抗生物質です。しかし、多くの人はまだそれが効くと信じて、服用しています。その副作用のために骨髄が損傷され、造血作用や、血小板生成機能を失ってしまっている患者もみかけます。クロラムフェニコールの使用によって、骨髄が破壊されて死亡した患者を何人もみてきています。肺炎、赤痢や尿管感染などの一般的な感染病が、あらゆる抗生物質に対するバクテリア耐性が高まることによって、死病となってしまうことが深く懸念されます。耐性を得たバクテリアの細菌が、人々や空気を介して伝染して発展途上国にゆきわたり、人々に致命的な病を引き起こす恐れがでています。
 シアヌーク病院では、高価ではあっても必要な微生物検査を実施して、最善の治療法を決定し、また適切な抗生物質の用法を遵守することを、内科医に教育指導しています。


人事ニュース ヘザー・マーグソンさん

 英国出身の看護婦であるヘザーさんは、安定していた高給の職をなげうって、経験の豊富な看護婦を切望している、当病院に駆けつけてくれました。英国ワースター州で、看護婦教育を受けたヘザーさんは、最近では末期患者を介護する、ホスピスに勤務していました。彼女の経験は、当病院看護スタッフに、死期の迫っている患者に対する看護技術と、そうした人々に対する敬意と尊厳を学ぶ機会を与えてくれることでしょう。HIV患者の増大に伴い、彼女の技術と慈悲が、そうした患者を介護するための我々の案内役になってくれることを期待しています。


図書館だより ゲイル・コーガンさん

 ゲイル・コーガンさんは、当病院の医療図書館を充実させるために、ご自身の時間、経験と能力を惜しみなく提供してくださいました。

 何人もの個人的な知り合いから、シアヌーク病院における、カンボジア人医療スタッフの研修や、貧困患者に提供している無料医療について聞かされていたゲイルさん。マサチューセッツ州ローウェルのセント・ジョンズ病院の医療図書館員を引退した後、彼女は当病院で、ほぼ2年間のあいだ毎週3日を費やし、20年にわたる経験と、医療図書館とのコネクションを生かして、本の機能的な配置に全力をそそぎ、第1級の医療図書館にしてくれたのです。彼女は個人的にも、重い医療書籍が詰まった箱の運搬手配や、ニューイングランド全州からジャーナルを取り寄せて、それらのカンボジアへの輸送費用を、ご自身で負担されました。さらに、自己負担で2週間にわたってプノンペンを訪れ、自らこれらの資料の荷解きや分類に携り、当病院図書館員のボーンさんを指導してくださったのです。

 この病院とカンボジアにおける、将来の医療教育の発展に尽くしてくださったゲイルさん。その偉大なご功労に心から感謝いたします。

患者の物語
テイエン・ヨウンさん
 テイエンさんは、籠を背負ってバイクに乗り、パンを売って生活をしていました。1997年7月の政変中に交通事故に遭って、右の脛骨を骨折し、生活の途が閉ざされてしまいました。
 開口した骨折部を支えて地元病院に運ばれ、2、3日そこで過ごしました。しかし、結局手術費用が払えず、傷口が開いたまま帰宅したのでした。折れた骨は露出し、足は正常な位置から90度も回転していました。
 キーン・クレアン・リハビリテーションセンターのスタッフが初めて彼を診療したとき、事故から10ヵ月も経つのに、折れた骨は露出したま患者の物語テイエン・ヨウンさんまで、足は硬化し、全く使えなくなっていました。右脚には全く体重をかけられず、無論働くことも不可能でした。幸い、ヨウンさんは自宅で傷口を清浄に保つように心がけていたので、感染の進行は最小限にとどめられていましたが、検査の結果、患部は耐抗生物質のStaphバクテリアに侵食されていました。

 シアヌーク病院にて、最初の3回の手術が行われました。壊死し露出している骨を除去し、外部固定フレームを装着し、外科スタッフが慎重に経過を見守りました。徐々に治癒の傾向が現れはじめました。現在、彼は次の手術まで自宅で待機しています。この手術は、折れた脛骨をつなげるためのものです。
 ヨウンさんは、感謝を次のように表していました。
 「キーン・クレアンとこの病院の支援にとても感謝しています。彼らは無職の私を助け、手術を受けさせてくれました。毎日患者の手当てに献身され、そしてみなさんがとても優しい、この病院の全スタッフにお礼を申し上げます」


ゴウ・ボウンさん
 ゴウ・ポウンさんは25歳の男性で、来院したときは激しい呼吸困難、高熱を発し、肌が黄ばんでいました。彼は、子供の時にわずらったストレプトコカル咽頭感染(リウマチ熱)のために心臓弁が損傷を受けており、これが心機能不全を起こしていたのです。さらに、肺炎と慢性ウィルス肝炎(B型肝炎)も併発していました。治療の結果、重い心疾患は軽減し、肝炎と肺炎も好転してゆきました。しかし、心臓弁の損傷はカンボジアでは治療できません。その後まもなく、病状がひどくなってゆきました。胸痛が激化し、胸に肺炎の複合症状である膿腫を起こしていることが判明したのです。

 抗生物質を変えて投与しましたが効果がなく、死の危険が迫っていました。一般外科のルース・トゥーテイル医師が、超音波援用による排膿処置を実施したところ、褐色の異常な液があらわれ、これを精密分析にかけました。肺炎と肺膿腫は、ともにバクテリアに起因していることが判明。これは唯一の例外をのぞいて、カンボジアで入手できるあらゆる抗生物質に耐性があるものです。そして、我々が遭遇したなかでも、もっとも抗生物質耐性が強いバクテリアでした。幸い、製薬会社から寄贈されていた、この唯一の抗生物質が、若干在庫がありました。
 こうして処置をして8日後、彼はついに回復し、膿瘍も肺炎も完治して退院できたのです。ボウンさんは、
 「私を治療してくださった、この病院の医師や看護婦スタッフの皆様、本当にありがとうございました。みなさんは、ポルポト以前に、私が知っていた兄弟や両親であるかのように介護してくれました。とても幸せです。」

彼の妻は、
「この病院は、カンボジアの国民に本当の希望を与えてくれています。いまの時代、私たちはこのような医療を受けられることができて、なんと幸運なのでしょうか。肺炎のような病気が抗生物質耐性をもってしまう将来のことが、心配です。」

 シアヌーク病院は、抗生物質の適正な使用に細心の注意を払っており、全医療スタッフに正しい知識のもとに、適切な抗生物質使用を行うことを徹底していますー次世代の子供たちの将来が、抗生物質耐性の高まりによって脅かされないためにも。


ゲイル・コーガンさん
 ゲイル・コーガンさんは、当病院の医療図書館を充実させるために、ご自身の時間、経験と能力を惜しみなく提供してくださいました。
 何人もの個人的な知り合いから、シアヌーク病院における、カンボジア人医療スタッフの研修や、貧困患者に提供している無料医療について聞かされていたゲイルさん。マサチューセッツ州ローウェルのセント・ジョンズ病院の医療図書館員を引退した後、彼女は当病院で、ほぼ2年間のあいだ毎週3日を費やし、20年にわたる経験と、医療図書館とのコネクションを生かして、本の機能的な配置に全力をそそぎ、第1級の医療図書館にしてくれたのです。彼女は個人的にも、重い医療書籍が詰まった箱の運搬手配や、ニューイングランド全州からジャーナルを取り寄せて、それらのカンボジアへの輸送費用を、ご自身で負担されました。さらに、自己負担で2週間にわたってプノンペンを訪れ、自らこれらの資料の荷解きや分類に携り、当病院図書館員のボーンさんを指導してくださったのです。
 この病院とカンボジアにおける、将来の医療教育の発展に尽くしてくださったゲイルさん。その偉大なご功労に心から感謝いたします。
スタッフの横顔
トク・ボーンさん
 ボーンさんは、過去11ヵ月にわたり、傑出したプロ意識、ハードワーク、そして忍耐ですぐれた業績をあげられました。
 まだ完成していなかった図書館のスタッフとして、彼は1年以上にわたって仮のスペースでの勤務に耐えてくれました。図書館の正式スペースがようやく空いたときには、彼は空間活用率と、有効性を最大に高めるためのレイアウトを積極的に提案し、率先して全ての書籍を移動し、再配置してくれました。
 マサチューセッツ州ボストンから訪問された、医療図書館員ゲイル・コーガンさんが、20年にわたるご経験をもとに、ボーンさんを指導されましたが、彼女はボーンさんの図書館学の要点の理解力と、向学心を賞賛されていました。
 ボーンさんは、病院の価値ある資産として、そしてカンボジアにおける最大の英語資料の宝庫としての、この図書館に対する責任を負っています。彼は、当図書館のインターネットシステムユーザに対する、自発的アシスタントを務めており、また、その働きぶりと一貫性で大変信頼されています。ボーンさんは、病院スタッフの貴重な財産であり、彼の温かい心とプロ意識を高く評価するものです。
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