プノンペン市より寄贈された土地に
付属病棟の建設が始まる
開設後五年を経て、シアヌーク病院は、貧しく必要とする人々のための医療に、大きな影響を及ぼしてきました。カンボジア人医学生に卒業後の臨床研修の場を提供し、患者に高水準の医療を施すという目的を、着実に果たしています。
百二十名に及ぶカンボジア人医療スタッフは、臨床講義や指導のおかげで、著しい進境を見せてきました。各分野のリーダー的存在に成長している方々も少なくありません。開院後の累計患者総数は延べ35万人にのぼり、じつに一日平均300人を診療してきた計算になります。それでも、需要は一向に衰える気配はありません。
そうした要請によりよく応えられるようにと、付属病棟の建設が私たちの長年の念願でしたが、この1月に着工式が行われ、夢は現実への第一歩を踏み出しました。
チェア・ソファラ・プノンペン市長の司会で、市より付属施設建設のために寄贈された土地にて式典が行われました。病院スタッフ、ゲストや報道陣を前に、国営放送により全国放映されたスピーチで市長は、全国からこの病院を頼って訪れる患者たちに無料の医療を提供されているシアヌーク病院に、深く感謝いたします。スタッフのみなさまは、カンボジア人医師、看護婦、薬剤師たちにその優れた技術と知識を伝授してくださっています。殺到する膨大な数の患者に対して、病院は小さく、土地も狭いことがおわかりいただけるでしょう。今後とも、みなさまのお力になりたいと願っていますと挨拶されました。
最後に、市長は、病院理事グラハム・ガムリー医師と共に、付属施設の基礎を構成する一六八個のコンクリート枠の最初の一個を運びました。
この新しい建物は全てワールドメイトの深見東州氏が御寄付下さるものですが、基礎工事期間中に、このプロジェクト完遂のためのさらなる資金を調達したいというのが、私たちの願いです。付属施設は、計画されている講義施設により研修機能が高められ、また、血液銀行や新しい結核治療研究施設が入る検査スペースが広くなります。一階では、身体検査や現在屋外で行っている診療の一部を行う予定です。
デジタル技術の権威が来訪
デジタル技術の権威で、MITマサチューセッツ工科大学メディアラボラトリーのニコラス・ネグロポンテ所長が、イレーヌ夫人、ご子息のデイミトリさんと共に当病院を訪問、スタッフを激励し、支援を約束されました。
「みなさんのチームワークと広いお心にとても感銘を受けました。」と語っていました。
ネグロポンテさんご一家は、辺境のプレア・ヴィヘア県に建設した学校の進行状況を視察するために、カンボジアを訪れたものです。
当病院の革新的な遠隔医療プログラムは、貧しい学童がインターネットになじめるように設立された衛星通信を通じ、この村で実施されています。毎月、シアヌーク病院の看護士がロビブ村を訪れ、医療需要を査定しています。看護士は衛星を通じて、シアヌーク病院の医療チームとマサチューセッツ総合病院の遠隔医療パートナーとの間で、症状や治療情報を交換することができます。
エドワード医師とバーバラ・ラフリンさんが技術を伝授
エドワード医師と妻のバーバラさんが、当病院に三週間ボランテイアとして協力してくださいました。
ラフリン医師は、米国のニューヨーク大学、ベルビュー医療センター、そしてラスクリハビリテーション研究所の3つの権威ある医療機関に勤務経験のある、整形外科とリハビリテーションの専門医です。ラフリン医師は、ボランティアとして来訪され、その豊富な経験を当病院で活かされました。
「外科医の方々が提供されている包括的治療にたいへん感銘を受けました。みなさんたいへん優秀で、献身的で向上心が高く、また私のささやかなお手伝いにもたいへん感謝してくれました。病院理事のガムリー医師やデラコスタ医師が、シアヌーク病院における整形外科技術の高い水準を担っておられます。」
ラフリン医師は、切断、顔面筋肉痛、ターサルトンネル症候群、後ポリオ症候群、腰痛診断とリハビリなどの合併症について講義され、膝下切断の新規技術についてビデオ研修をしてくださいました。
「シアヌーク病院での勤務は、教える側と学ぶ側双方の立場から、とても貴重な糧となりました。また、スタッフの方々との知識や経験の交換という面でも、実り多き体験ができましたと語っていました。また、ここの医療図書館はすばらしい。私の勤務する大学病院のものより優れた外科書が収蔵されています」と絶賛して下さいました。
「この病院なしには、多くの患者は生存できず、仕事に復帰もできず、あるいは医療自体を受けることができなかったでしょう。限られた施設の中でスタッフが果たしている貢献の大きさには、驚くばかりです。援助資金が増やされれば、医療技術や処置レベルがさらに向上することでしょう。スタッフの方々のプロ意識、技術、包容力、そして献身ぶりは賞賛されるべきものです。」
ニューヨークのソーシャルワーカー協会会員のラフリンさんは、35年にわたるご経験を家族セラピーに活かしたいと希望されていました。当病院ボランティア・コーディネーターのシャベリットさんやホーム・ケア・チームと共にHIV/AIDS患者の家庭を訪問されたラフリンさんは、エルトン・ジョン・エイズ・クリニックでのスタッフやボランティアの働きぶりに心を動かされたといいます。
「みなさんがここでなさっているお仕事は、最も価値あることです。一人の人間から他の人間への贈り物として、これ以上のものはないでしょう。何ももたない患者の人たちに対して、死が訪れるまで食事を与え、入浴させ、身だしなみを整え、そして愛情をもって介護し、まさに彼らの家族になっていたことは、私のこれまでの経験の中でも最も驚嘆に値するものです。ワーカーの方々の特筆すべき態度は、彼らが働くコミュニテイにおける人間の尊厳に対する敬意でした。これほど限られた状況のもとで、これほど多くのことを実現しているところは見たことがありません。ニューヨークでこのようなプロジェクトを実施しようとすれば、数百万ドルかかるでしょう。ここではそれを、そのわずか何パーセントかの予算で実現されているのです。」
バーバラさんはまた、当病院スタッフに対して、臨床ストレスカウンセリングとストレス管理についての講義を実施してくださいました。病院での仕事は、たいへん困難を伴います。患者たちは病気の苦痛のみならず、この国が遭遇した政治的悲劇の後遺症からくる恐怖とも戦っています。医療スタッフはこのことも心に留めておくことが大切だと思いますと彼女は話してくれました。
ブラウン大学との提携が実現
ブラウン大学と学術協力が結ばれることになりました。ブラウン大学医学部の臨床診療部助教授のスコットアレン医師が、フォガーテイ財団に関わる四箇所の調査場所を査定するためにカンボジアにこられたときに、当病院にも立ち寄られたのでした。来院されたアレン医師は、C型肝炎や、血液から生まれる病原菌に対する普遍的な警戒の必要性などについて、講義してくださいました。
先端外科研修プログラムに二人が合格
今年、当病院外科医のソピープさんとモニーさんが、フランス政府支援による外科医研修プログラムであるCESを高得点で合格しました。彼らは、2000年度に合格した当病院の同僚外科医、チャンタさん、ソチェットさんの仲間に入ることになります。これは、厚生省が認定する唯一の外科研修プログラムであり、三年間の研修の後、フランスの病院でインターンとして62ヶ月勤務することになります。その後、正式に外科医としての認定証が授与されます。1998年2月にシアヌーク病院外科部がオープンしたときに、当病院はこの研修プログラムのための指導病院の一つとして選定され、六ヶ月ローテーションで外科医を受け入れています。これまで当病院に割り当てられた14の研修員席のうち、4つを当病院外科医が占めています。
最先端の外科技術を学び、祖国の医療指導者となるべく精進されている両医師を誇りに思います。
さようならマット&ローラ・アネットさん
当病院に尽くされたマット&ローラ・アネットさんご夫妻の価値あるご貢献をたたえます。ローラさんは、3年半にわたり、外科病棟看護婦のためのリーダーシップ研修にエネルギーを注いでくださいました。マットさんは、カンボジアご滞在の8ヶ月中、当病院のプロジェクト管理を支援してくださいました。2001年6月に結婚されたお二人の米国の新居での新たな生活がすばらしいものでありますよう、心からお祈りいたします。
チーム賞 救急治療室看護婦チーム
このチーム賞は、当病院の治療および研修プログラム効率化のために必須であり、協同と融和を評価する特別の方法です。
この権威ある病院チーム賞の受賞グループは、救急治療室の看護婦であるケオ・ロタさん、バン・サモールさん、マ・ソファットさん、マラ・クーンさん、ソモンサ・コイさん、ホン・ソンさん、そしてソ・レッシの皆様です。彼女たちは、救急治療室の日々の臨床管理を担っています。
当病院における看護ユニットのうちで、救急治療室の看護婦たちは、もっとも自立的に働き、海外スタッフの監督は最小限でとどまっています。彼女たちのユニットとしてのリーダーシップは、当病院がスタッフに対して提供している管理およびリーダーシップ研修プログラムの成果を証明しています。彼女たちの特殊で独立した役割にもかかわらず、これらの看護婦たちは、看護婦仲間同士また医師たちとの間における良好な勤務関係を築くことに成功しています。救急治療室の看護婦たちは、当病院のすべての部長から尊敬されています。おめでとうございます! |