ワールドメイト
どんなに貧しい人でも無料で治療が受けられる、カンボジアのシアヌーク病院 サイトマップ
寄付・支援方法
カンボジアの今
シアヌーク病院とは
活動内容と目的
建設ストーリー
組織と運営
マンスリーレポート
医療レポート
内科医療
外科医療
看護部門
放射線医療
薬局部門
HIVへの取り組み
医療図書館
活動報告

2002 8
マンスリーレポート
付属病棟の建設が始まる

プノンペン市より寄贈された土地に
付属病棟の建設が始まる

 開設後五年を経て、シアヌーク病院は、貧しく必要とする人々のための医療に、大きな影響を及ぼしてきました。カンボジア人医学生に卒業後の臨床研修の場を提供し、患者に高水準の医療を施すという目的を、着実に果たしています。
 百二十名に及ぶカンボジア人医療スタッフは、臨床講義や指導のおかげで、著しい進境を見せてきました。各分野のリーダー的存在に成長している方々も少なくありません。開院後の累計患者総数は延べ35万人にのぼり、じつに一日平均300人を診療してきた計算になります。それでも、需要は一向に衰える気配はありません。
 そうした要請によりよく応えられるようにと、付属病棟の建設が私たちの長年の念願でしたが、この1月に着工式が行われ、夢は現実への第一歩を踏み出しました。

 チェア・ソファラ・プノンペン市長の司会で、市より付属施設建設のために寄贈された土地にて式典が行われました。病院スタッフ、ゲストや報道陣を前に、国営放送により全国放映されたスピーチで市長は、全国からこの病院を頼って訪れる患者たちに無料の医療を提供されているシアヌーク病院に、深く感謝いたします。スタッフのみなさまは、カンボジア人医師、看護婦、薬剤師たちにその優れた技術と知識を伝授してくださっています。殺到する膨大な数の患者に対して、病院は小さく、土地も狭いことがおわかりいただけるでしょう。今後とも、みなさまのお力になりたいと願っていますと挨拶されました。

 最後に、市長は、病院理事グラハム・ガムリー医師と共に、付属施設の基礎を構成する一六八個のコンクリート枠の最初の一個を運びました。
 この新しい建物は全てワールドメイトの深見東州氏が御寄付下さるものですが、基礎工事期間中に、このプロジェクト完遂のためのさらなる資金を調達したいというのが、私たちの願いです。付属施設は、計画されている講義施設により研修機能が高められ、また、血液銀行や新しい結核治療研究施設が入る検査スペースが広くなります。一階では、身体検査や現在屋外で行っている診療の一部を行う予定です。


デジタル技術の権威が来訪

 デジタル技術の権威で、MITマサチューセッツ工科大学メディアラボラトリーのニコラス・ネグロポンテ所長が、イレーヌ夫人、ご子息のデイミトリさんと共に当病院を訪問、スタッフを激励し、支援を約束されました。
 「みなさんのチームワークと広いお心にとても感銘を受けました。」と語っていました。
 ネグロポンテさんご一家は、辺境のプレア・ヴィヘア県に建設した学校の進行状況を視察するために、カンボジアを訪れたものです。
 当病院の革新的な遠隔医療プログラムは、貧しい学童がインターネットになじめるように設立された衛星通信を通じ、この村で実施されています。毎月、シアヌーク病院の看護士がロビブ村を訪れ、医療需要を査定しています。看護士は衛星を通じて、シアヌーク病院の医療チームとマサチューセッツ総合病院の遠隔医療パートナーとの間で、症状や治療情報を交換することができます。


エドワード医師とバーバラ・ラフリンさんが技術を伝授

 エドワード医師と妻のバーバラさんが、当病院に三週間ボランテイアとして協力してくださいました。
 ラフリン医師は、米国のニューヨーク大学、ベルビュー医療センター、そしてラスクリハビリテーション研究所の3つの権威ある医療機関に勤務経験のある、整形外科とリハビリテーションの専門医です。ラフリン医師は、ボランティアとして来訪され、その豊富な経験を当病院で活かされました。
 「外科医の方々が提供されている包括的治療にたいへん感銘を受けました。みなさんたいへん優秀で、献身的で向上心が高く、また私のささやかなお手伝いにもたいへん感謝してくれました。病院理事のガムリー医師やデラコスタ医師が、シアヌーク病院における整形外科技術の高い水準を担っておられます。」

 ラフリン医師は、切断、顔面筋肉痛、ターサルトンネル症候群、後ポリオ症候群、腰痛診断とリハビリなどの合併症について講義され、膝下切断の新規技術についてビデオ研修をしてくださいました。
 「シアヌーク病院での勤務は、教える側と学ぶ側双方の立場から、とても貴重な糧となりました。また、スタッフの方々との知識や経験の交換という面でも、実り多き体験ができましたと語っていました。また、ここの医療図書館はすばらしい。私の勤務する大学病院のものより優れた外科書が収蔵されています」と絶賛して下さいました。
 「この病院なしには、多くの患者は生存できず、仕事に復帰もできず、あるいは医療自体を受けることができなかったでしょう。限られた施設の中でスタッフが果たしている貢献の大きさには、驚くばかりです。援助資金が増やされれば、医療技術や処置レベルがさらに向上することでしょう。スタッフの方々のプロ意識、技術、包容力、そして献身ぶりは賞賛されるべきものです。」

 ニューヨークのソーシャルワーカー協会会員のラフリンさんは、35年にわたるご経験を家族セラピーに活かしたいと希望されていました。当病院ボランティア・コーディネーターのシャベリットさんやホーム・ケア・チームと共にHIV/AIDS患者の家庭を訪問されたラフリンさんは、エルトン・ジョン・エイズ・クリニックでのスタッフやボランティアの働きぶりに心を動かされたといいます。
 「みなさんがここでなさっているお仕事は、最も価値あることです。一人の人間から他の人間への贈り物として、これ以上のものはないでしょう。何ももたない患者の人たちに対して、死が訪れるまで食事を与え、入浴させ、身だしなみを整え、そして愛情をもって介護し、まさに彼らの家族になっていたことは、私のこれまでの経験の中でも最も驚嘆に値するものです。ワーカーの方々の特筆すべき態度は、彼らが働くコミュニテイにおける人間の尊厳に対する敬意でした。これほど限られた状況のもとで、これほど多くのことを実現しているところは見たことがありません。ニューヨークでこのようなプロジェクトを実施しようとすれば、数百万ドルかかるでしょう。ここではそれを、そのわずか何パーセントかの予算で実現されているのです。」

 バーバラさんはまた、当病院スタッフに対して、臨床ストレスカウンセリングとストレス管理についての講義を実施してくださいました。病院での仕事は、たいへん困難を伴います。患者たちは病気の苦痛のみならず、この国が遭遇した政治的悲劇の後遺症からくる恐怖とも戦っています。医療スタッフはこのことも心に留めておくことが大切だと思いますと彼女は話してくれました。


ブラウン大学との提携が実現

 ブラウン大学と学術協力が結ばれることになりました。ブラウン大学医学部の臨床診療部助教授のスコットアレン医師が、フォガーテイ財団に関わる四箇所の調査場所を査定するためにカンボジアにこられたときに、当病院にも立ち寄られたのでした。来院されたアレン医師は、C型肝炎や、血液から生まれる病原菌に対する普遍的な警戒の必要性などについて、講義してくださいました。


先端外科研修プログラムに二人が合格

 今年、当病院外科医のソピープさんとモニーさんが、フランス政府支援による外科医研修プログラムであるCESを高得点で合格しました。彼らは、2000年度に合格した当病院の同僚外科医、チャンタさん、ソチェットさんの仲間に入ることになります。これは、厚生省が認定する唯一の外科研修プログラムであり、三年間の研修の後、フランスの病院でインターンとして62ヶ月勤務することになります。その後、正式に外科医としての認定証が授与されます。1998年2月にシアヌーク病院外科部がオープンしたときに、当病院はこの研修プログラムのための指導病院の一つとして選定され、六ヶ月ローテーションで外科医を受け入れています。これまで当病院に割り当てられた14の研修員席のうち、4つを当病院外科医が占めています。
 最先端の外科技術を学び、祖国の医療指導者となるべく精進されている両医師を誇りに思います。


さようならマット&ローラ・アネットさん

 当病院に尽くされたマット&ローラ・アネットさんご夫妻の価値あるご貢献をたたえます。ローラさんは、3年半にわたり、外科病棟看護婦のためのリーダーシップ研修にエネルギーを注いでくださいました。マットさんは、カンボジアご滞在の8ヶ月中、当病院のプロジェクト管理を支援してくださいました。2001年6月に結婚されたお二人の米国の新居での新たな生活がすばらしいものでありますよう、心からお祈りいたします。


チーム賞 救急治療室看護婦チーム

 このチーム賞は、当病院の治療および研修プログラム効率化のために必須であり、協同と融和を評価する特別の方法です。
 この権威ある病院チーム賞の受賞グループは、救急治療室の看護婦であるケオ・ロタさん、バン・サモールさん、マ・ソファットさん、マラ・クーンさん、ソモンサ・コイさん、ホン・ソンさん、そしてソ・レッシの皆様です。彼女たちは、救急治療室の日々の臨床管理を担っています。
 当病院における看護ユニットのうちで、救急治療室の看護婦たちは、もっとも自立的に働き、海外スタッフの監督は最小限でとどまっています。彼女たちのユニットとしてのリーダーシップは、当病院がスタッフに対して提供している管理およびリーダーシップ研修プログラムの成果を証明しています。彼女たちの特殊で独立した役割にもかかわらず、これらの看護婦たちは、看護婦仲間同士また医師たちとの間における良好な勤務関係を築くことに成功しています。救急治療室の看護婦たちは、当病院のすべての部長から尊敬されています。おめでとうございます!

患者の物語
ナイさん
 7ヶ月前にコンクリートに落ちたナイさんは、膝をすりむき、腫れと痛みに悩まされていました。5日後、地元の病院を訪れてX線を撮ったところ、膝の皿が小さく骨折し、脱臼していることが判明。しかし、経済的にそれ以上の治療を受ける余裕がなく、自宅にて、近くの薬局で買った痛み止めを飲んでいたとのこと。
 ナイさんは、事故の日以来働けず、ひざや腿が腫れ、激痛が消えませんでした。歩けないので組織が萎縮し、ひざを延ばせなくなっていました。不具になることは極貧に直結してしまうという恐れが、シアヌーク病院を訪れることを決意させたのです。

 診断結果では、隔壁関節炎と左大腿骨中部の骨膜炎に罹っていました。当病院のカンボジア人スタッフ研修指導のために訪問されていた著名な整形外科医エドワード・ラフリン医師が膝を開いたところ、関節炎により破壊されていました。ラフリン医師は、当病院医師と協力して、膝の接合手術を行い、足をまっすぐにして強化する処置を採りました。ふつうの人にとっては、片方の脚が固くまっすぐになるだけでは満足いく解決ではないかもしれませんが、20歳のナイさんにとっては、また働けることが本当にうれしかったようです。退院を迎えたナイさんは、次のように喜びを口にしていました。
 「両親は貧乏で、治療費も高いので、どこも手当てしてくれようとしませんでした。無料で治療してくれたシアヌーク病院には本当に感謝しています。」
 ナイさんの状況は、貧困が不具を生んでしまうことと医療へのアクセスができないときの苦しみを顕著に物語っています。当病院外科チームは、4年間に3000例以上の外科手術を手がけ、六人の外科医の研修を行い、6人以上の地方の外科医をローテーションで指導しました。

スタッフの横顔
ボブ・コロンさん
 ボブ・コロンさんは、1997年8月にフィリピンから当病院に放射線技師として赴任されました。以来、その技術とご経験を活かされてきた功績が評価され、今月の最優秀スタッフとして認定されました。
 ボブさんは、日本から寄贈された小さな携帯X線機のみをもって、放射線部を立ち上げました。放射線部はその後発展を遂げ、現在は3人のカンボジア人放射線撮影技師と2人の放射線技術士を擁するまでになりました。

 ボブさんは熱心に、解剖学、X線の基礎、患者治療や処理をスタッフや他病院からの客員研修生に講義、指導されています。彼は、継続学習の大切さを強調し、助言も厭いません。常に最新技術を会得しておくことの必要性が念頭にあります。先般、もう一人の当病院技術者をフィリピンの学会に派遣し、新しい脳X線開発および診断精度向上について学ぶ機会を与えました。

 また、率直で謙虚なボブさんは、患者や同僚のために犠牲になることを厭いません。クメール暦の新年や国民休日のときにも、自分が出勤し、同僚が家族と過ごせるように配慮してくれるのです。カンボジアの貧困患者のために献身されるボブさんの真心を高く称えるものです。

カイム・サム・ファスさん
 サム・ファスさんは、1年半前に当病院に採用され、優秀な内科病棟職員として貢献されています。働き者で率先垂範し、常に物事を改善し支援する方法の探究に余念がありません。患者IDシステムを軌道に乗せるための中心的役割を果たし、また救急治療部用ファイリングシステムの開発にも大きく貢献されました。医療書面を維持更新、病院の統計記録、患者履歴の系統化などに尽力されています。

 これらはすべて入院患者に円滑に対応するためにたいへん重要なものです。当病院の研修プログラムは、彼女がフルタイムの勤務後に行ってくれている翻訳業務に非常に助けられています。さらに、ご自身の研鑽のために経営研究所に通い、会計学の学位をとるための夜間授業も受けています。彼女は、スタッフにとって、偉大なモデルです。

次のレポート