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2003 3
マンスリーレポート
ボストンの医師父子が心臓トレーニングを支援

ボストンの医師父子が心臓トレーニングを支援

 米ボストンの心臓専門内科医ミルトン・ドレーク氏が、フィラデルフィアのテンプル大学医学部四回生のご子息と共に来院、二週間滞在されました。
 ミルトン氏は、先般オペレーションUSAから到着していた超音波心臓撮像装置の臨床使用方法をスタッフにはじめて指導し、またストロークや冠状動脈症候群について講義されました。
「米国の典型的な心臓病患者は80歳代の老人たちですが、ここでの平均年齢は20-30歳代です。幼少の頃に罹って治療を受けないまま放置された疾患が、リウマチ熱や弁損傷を引き起こすことが原因です。この超音波ドプラ診断装置は、そうした若い患者の診断治療に絶大な威力を発揮します。これを活用することで寿命を大幅に伸ばすことができ、長く家族を養えるでしょう。」
 ミルトン医師は、前回訪問時からの当病院の発展ぶりに言及し、医療・看護スタッフの弛まぬ向学心、そして病院全部門にわたる高レベルのチームワークと協力体制に感銘を受けました。看護技術や研修内容は驚くべき水準に達しています。また地元スタッフによる臨床および運営管理面におけるリーダーシップに感動しました。
 さらにお2人は、2年間にわたる医療スタッフ支援のためにと1万2000ドルの浄財をご寄付くださいました。ミルトンとジョンさんの技術指導と尊い真心に、深く感謝申しあげる次第です。


「オーソペデイックス・オーバーシーズがボランティア」研修活動を継続

 サンフランシスコ在住の手外科専門医のラモント・カードンさんが、スタッフに知識と技術を伝授してくださいました。手の解剖学、腱の損傷、および手や手首の骨折についての講義のほか、手の先天性変形に関する複雑な治療を、院長・グラハム・ガムリー医師と協力して行い、また外科病棟では患者の査定を手伝ってくださいました。
  カードン医師は、当病院を訪れたオーソぺデイックス・オーバーシーズ所属の六人目のボランティアとなりました。彼の絶大な貢献に心から謝意を表す次第です。


HIV共同体問題改善ワークショップ開催

 「食べ物を売ってくれない。」
 「皆に嫌われ、話かけられず、子供同士も遊ばせてくれない。」
 「エイズ患者に部屋は貸せないと、いくつものアパートから追い出された。」
 これらは、先ごろ開催されたHIV・結核患者差別に関するフォーラムで、激しく議論された議題です。このフォーラムは、シアヌーク病院・カンボジアが主催、国立エイズ局・国立HIV/AIDS皮膚病・STDセンターの協賛、そしてベルギー熱帯医学研究所が後援しました。

 HIV/AIDS患者、地域リーダー、そして『家庭介護チームセブン』の介護者たちは、抗レトロウィルス薬物の入手可能性、コスト、副作用、薬物の相互作用、そして対症療法の危険性などについて活発に意見を交わしました。当病院のネイビー医師、プレム・プレイ医師、そしてコミュニテイ・プログラム・コーデイネーターのヴァトダナ・チャベリス氏が、ルット・リネン医師の監督のもとでこの意義深いイベントを企画し、発表を行いました。ブラウン大学から出張で来院中のハブ・ハーウェル医師は、質疑応答に協力してくださいました。

 医師で厚生大臣のマムブンヘンさんは開演スピーチで、貧しいHIV/AIDS患者の生活水準向上のために最も必要なサービス提供に貢献してくれていると、NGOの功績を称えました。当病院内科医チームは、ボランティアによりこれまで実施した1520世帯の訪問に基づく結核治療への提言と、『家庭介護チームセブン』の業績を総括しました。
 小グループによる問題解決のための討論では、地域のリーダーがコミュニケーションをとり、HIV/AIDSとその伝染に関する貧弱な知識と教育に起因して広がった差別をなくしていく責任者になることで総意を得ました。


シンガポールチームが最新心臓生命維持技術をカンボジアに供与

 先端心臓生命維持装置ACLSの専門家チームを招き、多くの人命を救済できる操作技術の研修会が催されました。シンガポール・タン・トック・セン病院救急治療部のアイリーン・ショー部長による指揮のもと、ギー・ヒアン・リム医師、ウィルソン・チョング医師、そして看護スタッフのロー・オー・ヒエングさんとスリマ・サリマさんが、先端心臓生命維持装置、外傷生命維持装置の操作の基本と応用をご教示くださいました。
 タン・トック・セン病院救急部のご協力により、当病院はカンボジアにおける先端心臓生命維持装置のトレーニングセンターになるでしょう。


さようならアンジェラ・ウェイドさん

 検査室主任のアンジェラ・ウェイドさんが、五年半の献身とハードワークを終え、退任されました。感動的なお別れ会が催され、その功績が称えられました。病院に就任した最初の外国人スタッフの一人として、彼女の仕事はがらんどうの四つの部屋を検査室とするところから始まりました。検査室を立ちあげた経験は皆無でしたが、計画を立て、機器を探し、電気を配線し、水回りを整え、スタッフを配属し、カンボジアで最も多忙な外来病院を創り上げたのでした。
 検査室開設当初からアンジェラさんの右腕であったテフ・サイナさんが、新しい検査室主任として、膨大な責任を引き継ぐことになります。テフさん曰く、彼女のような献身的で根気づよいスタッフを得たこの国は、本当にラッキーだったと思います。

 床からの水漏れ、漏電、ほこり、そして暑さにも悩まされました。しかし、一つひとつの困難に直面するたびに学ばせていただくことができました。アンジェラさんの下で働けたことを誇りに思います。
 検査室副主任にはチャン・クリシュナさんが就任します。チャンさん曰く、
「アンジェラさんは当初からスタッフをとても熱心に指導してくださいました。」
「優れた機器、質の高い技術、優秀なスタッフに恵まれたことに感謝しています。アンジェラさんから学んだ、チームとしてどう働くべきか、リーダーシップとは何かということを、他のスタッ フに伝えていきたいと思います。この部署からすでに五十人の研修生を送り出しましたが、彼らは講義と実践研修を共に受けられるこの部署が最高によかったと喜んでいました。」

 アンジェラさんは、貧しい人々や孤児たちのためにも献身的に尽くし、地元のコミュニテイに大きな影響を及ぼしました。消毒部のステアさんは、
「アンジェラさんは、スタッフの職業訓練プログラムを奨励してくださり、私はその英語教師を務めていました。彼女はカンボジアが大好きで、ときに床や壁掃除も一緒に手伝ってくれました。彼女は、私たちの模範としていつまでも記憶にとどまることでしょう。」 病院スタッフは、アンジェラの献身と働きぶりを、異口同音に賞賛していました。しかし、アンジェラ自身は、
「みなさまからいただいたものに比べたら、私が提供できたものなど、取るに足りません。ぜひ人々のために、これからも真心と愛を捧げていただきたいと願っています。」

患者の物語
「必死のチームワークと根気が一命をとりとめた」 タッチさん
 タッチさん四十歳が来院のため田舎の自宅を発ったとき、親戚は最後の別れだと思って、涙と嗚咽にむせんだといいます。その五日前に、発熱、胸の痛み、呼吸困難を訴えたタッチさんは、九〇ドルを払って地元病院に四日間入院。しかし症状は悪化し、何の薬も投与されなかったそうです。なんとか命を助けてほしいと奔走した妻が、友人から無料で高質の医療を受けられる当病院のことを聞き、つれてきたのでした。タッチさんは結核の疑いがあり、心臓周囲の嚢にたまっていた液体の排出措置が施されました。

 一見単純な病状にみえたのでしたが、その後病状が急に悪化、実は複雑な症例であったことが判明しました。ふたたび排液しようとしましたが、心嚢から激しく出血していたため、断念。他部署からの応援を得て、夜通しの治療がつづきました。

 一時は生存が危ぶまれるほどでしたが、何時間も根気づよい処置を続けた結果、ついに容態は安定しはじめました。内科部長のジネファー・ハインス医師は、彼は元々は健康体であったのですが、今回は一時的な感染の危険ポイントを乗り越えるのに時間がかかりました。それだけに、何とか助けたいとできる限りの手を尽くしました。スタッフのチームワークを誇りに思います。
 わずか四日後には、タッチさんは退院して妻と帰宅することができました。奥さんは、みなさまの献身のおかげです。本当にありがとうございました。もうだめだとあきらめていましたから、彼が戻ってきたのを見れば、みんな大喜びだと思います。


「海を越えたEメール相談による治療が奏功」 ヨク・スールさん
 ヨク・スールさんは、自宅の村から働いている水田にいくためにバイクに乗っていたところを車に撥ねられました。そばにいた人々が彼女を病院に連れてゆきましたが、右の臀部に激痛が発生していました。X線診断により、股関節から骨盤にかけて骨折していることが判明。強度の衝撃を受けた外傷の際によく発生する状態です。手術は、金属ピンを大腿から挿入、臀部の骨を牽引して骨盤内から下げる処置が行われました。

 当病院には経験ある専門医がいなかったため、二年前にシアヌーク病院で講義してくださったシドニー在住の整形外科医ビル・カミング医師に、Eメールで相談しました。彼は、受信したX線写真添付のメールを、こうした症例の治療に経験豊富な同僚のイアン・ハリス医師に転送してくれたのです。イアン医師による追加手術、治療監理、具体的技術に関する明快で実践的なご指導により、当病院のボイエット・デ・ラ・コスタ医師が、股関節を金属板とネジで固定する手術を実施。術後のX線写真を添付したメールを受信したイアン医師から、成功を祝福するお祝いのメッセージが返信されたのでした!

 ヨクさんの予後は非常に良好です。まもなく、ほとんど障害なく元の仕事に復帰できるでしょう。
 「この病院がなければ、膨大な金額の治療費を払わなければなりませんでした。お医者さんも看護婦さんも、本当に親切でした。」
スタッフの横顔
モニー・マオさん
 経理部の働き者、モニー・マオさんが今月の最優秀スタッフに選ばれました。過去五年間の貢献は、シアヌーク病院のかけがえのないスタッフであることを証明しています。
 当初の任務は、ボランティアとして箱、ベッドや他の物品を病院内で搬送することでした。なにごとにも積極的にとりくむ姿勢やしっかりした労働倫理によって、まもなくクラークに任命されました。その後、経理部からの要請で、モニーさんは管理助手としての現在の地位に昇進。現在、国立経営研究所にて市場管理を学びながら、経理部では自らの人脈をいかして、より多くの浄財を集めるために尽力してくれています。また、医療専門技術と資材双方を提供してくださる訪問者がたくさん来ていただけることを希望しています。
「需要は増えるばかりですが、供給はまだまだ足りません。どこまでも努力していく必要があります。」

インメニーさん
 内科病棟看護婦のインメニーさんは、当病院に勤務した五年間、プロ意識とチームワークのお手本のような存在でした。主要任務は、内科病棟の日々の活動を管理し、他の担当看護婦に対するリーダーシップ教育でした。
 最近始まった国境なき医師団との協力プロジェクトにおいて、インメニーさんは、臨床看護技術に関する深い理解を買われて、地元病院スタッフへの指導を要請されました。これまでに三度訪問し、看護スタッフに基本的な患者査定技術などを指導し、高い評価を受けています。
 インメニーさんはまた、内科医など他の医療専門家との関係やコミュニケーションを向上させることに意欲的で、専門的チームワークの模範となっています。当病院にとってかけがえのない財産であり、自分の持ち場ですばらしい模範を見せてくださっている彼女の貢献を称えたいと思います。
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