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2003 6
マンスリーレポート
国立エイズ局首脳が訪院

国立エイズ局首脳が訪院

 国立エイズ局永久副局長H・E・ヌット・ソコム博士が当病院を訪れ、HIV治療について意見を交換されました。患者やスタッフに言葉を掛けられたのち、ヌット博士は当病院の支援を表明され、
 「真に重要な治療と研修に携わっておられるみなさまに、心から感謝いたします。」
 と述べられました。


放射線科医師たちの活躍

 放射線部のプテアニー医師とヴァナリス医師が、カンボジア放射線学会から講師として招聘されました。両医師の講義は絶賛を博し、当病院放射線科はカンボジアにおける放射線技師教育部門のパートナーとして高く敬われ、評価されていることが明らかになりました。

 プテアニー医師は、HIV患者における胸部X線と腹部超音波診断により得た所見を発表。百件の症例のうち、胸部X線診断で病理学的発見ができたのは六十件、四十件が腹部超音波診断によるものでした。これらのほとんどは結核であることを示唆していましたが、いずれも特定はできず、さらに詳細の検査が必要でした。HIV患者の治療にあたり、放射線は併発している感染を発見して早期治療を可能とするので、患者の延命に大きく寄与することになります。

 バナリス医師は、急性盲腸炎における超音波診断による発見について講義しました。臨床診断において、超音波は、通常は手術しないで抗生物質で治療される慢性盲腸炎など、難度の高い症例に非常に有効だということでした。



ガムリー病院長のスピーチに感動、米国手外科学会が寄付

 米国バルチモアにて開催された米国手外科学会総会にて、グラハム・ガムリー病院長が約二千人におよぶ手外科医たちの前で、スライドやビデオを使って約一時間にわたる発表をしました。外科医たちはカンボジアの深刻な医療事情を知り、また発展途上国における絶大な需要を目の当たりにして、自らの使命の大きさを改めて認識されたようでした。グラハム病院長の講義に対して、手外科学会会長は、次のようなメッセージをお送りくださいました。

 「貴講義は、会議のクライマックスの一つとなり、すべての参加者に感銘を与えるものでした。」
 また、手外科学会の上級会議組織委員のサンドラ・ブラホスさんから次のようなすばらしいお知らせをいただきました。
 「非常に感動的なスピーチをお聞きした後、私たちは全員一致で、季節の贈呈用に使う予定だったお金を、シアヌーク病院に寄付させていただくことを決めました。」


専門療法士の支援

 現在、手の火傷、外傷や外科傷害に対するリハビリの専門家は当病院にはいません。海外では、これは物理療法などの特化された分野とされています。
  非常に優れた手セラピストのベス・マクニッシュさんが、ボランティアとして当病院を来訪され、物理療法士ラッシさんにその技術を伝授してくださいました。彼女はまた、物理療法の学校にも招かれて講義されました。その後、当病院の手外科医とガムリー病院長が外科研修を指導し、手に外傷を負った子供たちを治療している、国立小児科病院にも立ち寄られました。



ブラウン大のマーク・バーネット医師が来訪

 ブラウン大学との提携プロジェクトの一環として、内科レジデントのマーク・バーネット医師が来訪、六週間にわたり当病院に滞在されました。バーネット医師は、救急治療室、外来クリニック、内科病棟などで、カンボジア人医師たちと共に患者の診断にお力添えくださいました。

 今回が初めての発展途上国訪問だったというバーネット氏は、次のように感想を述べていました。
 「シアヌーク病院の医師の方々に、たいへん触発されました。彼らの診断技術は、すでに国際標準レベルに達しています。病歴を採り、身体検査したのち、非常にかぎられた手段だけで診断しなければなりません。研修プログラムが実施されたことで、医師たちがこの高いレベルの技術を会得できたのでしょう。そのうちの一人が、クルイ医師です。彼女は、患者たちのことを心から心配しており、非常に幅広い基本知識をお持ちです。彼女は、資源面での大きなハンデイにも関わらず、与えられた状況を最大限に活かそうと努力されています。シアヌーク病院は、カンボジアにおける医療システムの改革に絶大な貢献を果たしており、その過程で多くの困難に直面し、それを乗り越えてきたのです。

 マーク医師は、このような機会を得たことに感激され、この経験が彼の人生観を根底から変えたと語っていました。

患者の物語
ペン・ポックさん
 心臓を患っていた54歳のペン・ポックさんは、伝統的な治療家を訪ね歩きましたが、症状は悪化の一途をたどるばかりだったそうです。ある夜、激しい胸の痛みを訴えて、僻地の自宅から当病院に運ばれました。心臓発作の疑いで応急処置を受けたペンさんは、内科病棟に収容されました。

 ポックさんの娘さんは、この病院のお医者さんや看護婦さんがいなければ、父は死んでいたでしょう。ありとあらゆる伝統医薬を使ってみましたが、効き目はありませんでした。叔母がここで以前に手当てしていただいたことがあって、この病院のことを知っていました。父はもう以前のようには働けませんが、少なくとも家にいて私たちに助言したり励ましてくれます。

 治療にあたった客員内科医であるマーク・バーネットさんは、次のように語っていました。
 「カンボジア人内科医たちの敏速な対応と、きめ細やかな配慮に感銘を受けました。ポックさんは深刻な心臓病に冒されており、心臓カテーテルなどの大胆な措置が必要でした。これは米国ではごく一般の治療として、研修医が日常的に実施していますが、ここ、カンボジアではまだ行われたことがないのです。患部を突き止めて必要な治療もわかっていながら、それを実践できないというのは非常に苦しいことです。同僚のカンボジア人医師たちも、同じように感じていたようです。ただ、私と彼らとの違いは、彼らはこうした問題に毎日直面しているということです。こうした絶望的な状況にありながら、最大の努力を尽くしている彼らの姿勢に、非常に心打たれました。幸い、ポックさんの病状はその後順調に回復し、十一日間の入院後、帰宅できました。病院に財政的余裕がもう少しできて、所要機器を入手できれば、この治療法の実践と研修が近い将来実現されると期待しています。」

スタッフの横顔
リム・クルイ医師
 クルイ医師は、優れた業績と傑出した医療知識ならびに臨床能力により、1998年度の優秀内科医として表彰されています。彼女は当病院が開院した1996年に採用されました。その以前は、主に家族計画教育を推進しているカンボジア健康回復協会に勤務していました。

 同僚や後輩医師から非常に尊敬されているクルイ医師は、病状や治療方法について、非常に根気づよく患者に説明します。時間をおしまずに患者を励まし、彼らがわずらっている病気についての教育にも余念がありません。また、自らのプライベートな時間までも割いて、任務をまっとうされています。一人一人の医師たちの役割を見極め、需要に合わせた診療スケジュールの編成も、彼女の担当です。

 1999年、クルイ医師は特定婦人科の研修のため、ベルギーに派遣されました。現在は、心臓疾患、糖尿病、甲状腺の異常などの高いリスクをもつ患者を対象にした家族計画プログラムを開発中です。
 月間最優秀スタッフとして評価に十分値する功績を挙げてこられたクルイ医師。当病院の至宝といっても過言ではないでしょう。
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