心臓を患っていた54歳のペン・ポックさんは、伝統的な治療家を訪ね歩きましたが、症状は悪化の一途をたどるばかりだったそうです。ある夜、激しい胸の痛みを訴えて、僻地の自宅から当病院に運ばれました。心臓発作の疑いで応急処置を受けたペンさんは、内科病棟に収容されました。
ポックさんの娘さんは、この病院のお医者さんや看護婦さんがいなければ、父は死んでいたでしょう。ありとあらゆる伝統医薬を使ってみましたが、効き目はありませんでした。叔母がここで以前に手当てしていただいたことがあって、この病院のことを知っていました。父はもう以前のようには働けませんが、少なくとも家にいて私たちに助言したり励ましてくれます。
治療にあたった客員内科医であるマーク・バーネットさんは、次のように語っていました。
「カンボジア人内科医たちの敏速な対応と、きめ細やかな配慮に感銘を受けました。ポックさんは深刻な心臓病に冒されており、心臓カテーテルなどの大胆な措置が必要でした。これは米国ではごく一般の治療として、研修医が日常的に実施していますが、ここ、カンボジアではまだ行われたことがないのです。患部を突き止めて必要な治療もわかっていながら、それを実践できないというのは非常に苦しいことです。同僚のカンボジア人医師たちも、同じように感じていたようです。ただ、私と彼らとの違いは、彼らはこうした問題に毎日直面しているということです。こうした絶望的な状況にありながら、最大の努力を尽くしている彼らの姿勢に、非常に心打たれました。幸い、ポックさんの病状はその後順調に回復し、十一日間の入院後、帰宅できました。病院に財政的余裕がもう少しできて、所要機器を入手できれば、この治療法の実践と研修が近い将来実現されると期待しています。」 |