|
現在、シアヌーク病院は毎月約8千人の外来患者を診察しています。その半数以上がプノンペン以外の地域から訪れており、当病院の優れた医療技術が、カンボジア国内で広く知られていることがわかります。
さらに開設以来、内科病棟に入院した重症患者の数は686人にのぼっています(1998
年末現在)。この病院で治療を受けていなければ、そのうち約75%の方が亡くなっていたことでしょう。
内科医療チームは、米国の内科学の専門家であるキャメロン・ギフォード医師を筆頭に、フィリピンの一般医で外来クリニックの代表を務めるフェルディナンド・クルズ医師、英国の家族医療専門家でHIV
部門の代表を務めるギリアン・ホール医師らで構成されています。このチームは、栄養不良や免疫不全、慢性病などを抱える多数の患者の治療にあたるかたわら、カンボジアの内科医20
名をトレーニングしています。
この3名の指導スタッフの献身的努力によって、20 名の訓練生はめざましい進歩を遂げました。そしてその結果、内科医療
部門全体が大きな成長を果たし、より多くの患者を治療するこ とが可能になったのです。現在では、6名のカンボジア医師が、 上級内科医という新しい資格を得ています。
外来患者用クリニック/緊急治療室 |
|
|
|
クルズ医師は、アシスタントのホール医師と共に、毎日350人の外来患者の診察・治療と、内科医への臨床トレーニングにあたっています。収容力の拡大や、訓練生の進歩によって、開設時よりさらに多くの患者を治療できるようになってきました。
一方で、看護スタッフと入院用のベッドの数に限りがあるため、外来患者の入院は制限せざるを得ません。(さらなる設備投資が、切実に必要とされるところです。)
その代替措置として1998年、皮膚科・高血圧症・糖尿病そして結核症を専門とする、特別外来患者クリニックを開設しました。これによって、診察人数を増やすと同時に、スタッフに対する臨床教育の機会を増やすことに成功しています。
HIV/エイズ感染症 |
|
|
当病院はまた、多くのHIV 患者の治療に積極的に取り組んでいます。 HIV患者の病状は深刻で、多大な精神的・社会的・医療的サポート を必要とします。そのため、当病院のコスト負担もそれだけ大きく、
さらなる資金が必要とされる分野です。(カンボジアでは、HIV/エイズを治療するための医療コストは、ほとんどの患者にとって、負担できるよう な金額ではありません。シアヌーク病院での無料治療は、彼らにとって命綱なのです。)
現在までに、多くの患者がAIDS に付随する重病から回復し、数年以上命を延ばすことができています。治療やサポートにあたった内科医療チームには、絶大な感謝の声が寄せられています。
そして今では、多くの患者たちがHIV
サポー トグループのメンバーになり、プノンペン全域の訪問教育キャンペーンや、援助の必要な人々へのボランティア活動などに参加しています。
|
|
患者の病気は多様化しており、治療にあたる医師には、幅広い医療分野の教育が必要です。 |
|
|
内科病棟 |
|
|
ギフォード医師は、24
時間体制の入院患者の治療と、内科医全員の毎日の臨床トレーニングを統括しています。入院患者たちは皆、マラリア、腸チフス、髄膜炎、コレラ、結核症、心臓病、腎臓病…など、先進国ならば集中治療室入りを宣告されるレベルの、症状の重い病気を患っています。(軽度な症状の患者は外来患者用クリニックで、厳しい症状の患者は入院して内科病棟で治療を受けます。)
また内科病棟は、若き医師たちの教育の場としても機能しています。複雑な判断、効果的な治療、薬物療法との相互作用…こうした現場における教育のすべてが、カンボジアの医師たちを育てる重要な鍵となっているのです。
また、この病院の入院患者の1割がHIV感染者であることから、増え続けるHIV
感染者の治療に必要な技術の習得は、特に重要項目となっています。 |
教育と臨床トレーニング |
|
|
内科病棟では毎日、正確な診断技術や適切な治療についてのディスカッションを含め、カンボジア医師たちを対象とした多くの教育活動が行われています。
また午後には、クルズ医師・ギフォード医師により、基本的な診断技術や、現在の治療についての解説などが、実際の患者のケースに基づいてレクチャーされています。
シアヌーク病院では、トレーニングを行いながら質の高い医療を提供し、24
時間体制で貧しい人々の治療にあたっています。教育と健康管理の普及という2つのニーズをバランス良く満たすことが、将来にわたる私たちの目標なのです。
|
現地スタッフから上級内科医への昇進 |
|
|
リーダーシップや、専門技術の向上などが認められ、1998
年末現在、6名の現地医師が上級内科医に昇進し、24 時間体制のコール・ローテーションに加わりました。彼らはやがて、将来のカンボジアの医学分野をリードする、大きな原動力になることでしょう。
|