要分野交流型研修
当病院の全部門を通じて、スタッフの医療知識の向上が著しいことが、月例研修会《グランド・ラウンド2000年》の場で明らかになりました。
当病院のように重病患者の多い医療環境下では、一人の人間や1チームが単独で患者を治療することは、複雑すぎて不可能だといえます。《グランド・ラウンド》は、特定の病気の治療と患者管理について研鑚を深めるために、月例で行われている部門横断型の会議です。放射線部、看護部、外科部、内科部および検査室の各スタッフが集い、これまでに結核、HIV/AIDS、秘密保持、外傷処置、腎不全、胸部結核管理などをテーマに研修を重ねてきました。
前回の「急性腹痛」をテーマにした研修会では、まずカンボジア人のチャンタ外科医が、虫垂穿孔を起こした患者の経緯を紹介。ついで一般外科のコーネリア・ヘーナー医師が中心になって、症状、検査および術前管理についての意見交換が行われました。放射線学のバナリス医師は、超音波診断やX線撮影で得られる情報は限定されていることを指摘し、質疑応答が行われました。
この会議の最大の収穫は、病歴の記録と徹底的な臨床検査を実施することの重要性が認識されたことでした。これによって、再検査などに要する時間と費用を省くことができるからです。タイミングのよい効果的な治療の価値が明らかにされたといえるでしょう。
初めての外科「オープンハウス」が大成功
カンポン・ソム県立病院の事業部長であるスレイ・シン医師とその手術室スタッフ5人が、当病院初の試みである外科オープンハウスを活用されました。教育的指導、独立した観察および相互交流などが一日かけておこなわれ、参加者たちは、シアヌーク病院外科チームの統合された組織力に驚きを表していました。ビジターたちは、技術的に優れた消毒方法、安全な麻酔、そして能動的指導プログラム、効果的な回復として病棟における看護ケアなどの要素についての議論に耳を傾けていました。
シアヌーク病院は、医療専門家の教育ならびに臨床研修を、その重要な使命の一つとして掲げています。これはプノンペンのみに限らず、随時当病院外科スタッフは遠方の各県へ指導に赴いています。しかし、逆に地方病院の外科部スタッフが、一日費やして近代的で効率よいそして成功した外科プログラムを学ぶためにシアヌーク病院を訪れたのは今回が初めてです。
このグループは熱意にあふれ、プロとしての高い意識をもち、そして向学心が旺盛でした。彼らはいま、当病院で学んだ成果を実践に移す機会を迎えています。
アンケートには、次のような感想が寄せられました
『非常に有意義な企画でした。病院外科部を組織化し効率よく運営する方法を学ぶことができました』『正しい消毒の仕方、医師と他のスタッフとの間の良好な関係の維持など、ハッとさせられたことが多々ありました。医師の方々は自分の仕事に責任をもち、患者の病歴も見事に記録されていました』
また、とくに彼らの病院との著しい相違として、当病院の清潔さ、自分の仕事に対する責任感、そして消毒方法を挙げた参加者もいました。
コン・プテアニー医師が放射線学会で発表
当病院放射線部長であるコン・プテアニー医師が、4月に香港で開かれたアジア・太平洋診断・介在放射線セミナーに参加する機会を得ました。26の国々から派遣された250人におよぶ出席者が、外傷からまだこの地では実施できない最先端の技術までを網羅するトピックに耳を傾けました。
「シンガポールでBRACCOから推薦していただき、会議に出席でき、光栄でした。ワークショップでの実践研修により、当病院の高周波機械を筋肉骨超音波診断に活用する手法を会得できました」
とプテアニー医師は語りました。
垂直棚の導入で倉庫効率が大幅に向上
当病院のような医療施設を効率良く運営するには、IV液からX線にいたるまで8,000に及ぶ異なる品目を、いつでも取り出せる状態に保管しておく必要があります。
アメリケアズ、ノースウェスト・メデイカル・チーム、オペレーションUSAほかの医療機器供給会社や組織が、これらの品目の大部分を寄贈してくださり、おかげで2年分の需要を賄える状態にあります。しかし、その保存性、アクセス性、空間占有効率をいかにして向上させるかは、倉庫スタッフにとって重大な課題でした。
ソフォーンさん率いるエンジニアリングチームは、垂直棚システムの開発によって、見事この問題を解決してくれたのです。ブンリー、レアン、サンバ、セカさんを構成員とする彼のチームは、病院後部の防水布の陰で、今これらの大量の贈呈品を収容できるようにしてくれている支持台や棚を作成。手首副木、当病院の多くの栄養失調患者にとって命綱の高栄養粉末食品である300平方フィートの《Ensure》など、アクセス性が格段に向上しました。
歓迎!木村京子医師
日本から木村京子医師が当病院に勤務されることになりました。心から歓迎申し上げます。
彼女は、筑波大学医学部を卒業、現在日本内科学会の理事を務めていらっしゃいます。木村医師は都立墨東総合病院の伝染病部に勤務していた3年間に、2度当病院を訪問されています。内科部に所属されることになります。
ヨハンナ・レイナ医師を惜別
ヨハンナ・レイナ医師は、8ヵ月間にわたって自らの時間と経験を当病院に捧げてくださいました。まもなく、アメリカに帰国の途に着かれます。ニューヨークのコーネル大学伝染病・エイズ部に勤務される予定です。
ヨハンナ医師は、医師や看護婦の間でそのチームワークへの貢献が高く評価されていました。誰もが、彼女との別れを心から惜しんでいました。
「貧困患者を助けるということの意味、そして医学や指導についてここで多くのことを学ばせていただきました。また、最も大切なことは、どれだけ知識があるかではなく、周りの人々にどれだけ配慮し、どれだけ心から尽くせるかということを教えられました」
管理技術研修会を開催
部門横断による24人のスタッフが、リーダーシップ、管理能力、そして理解力を磨くための週例研修を始めました。この期間は、研修に力を集中するために、ニュースレターは隔月刊とさせていただきます。 最初の3回の研修は、当病院の誇る優秀スタッフたちの経験が披露され、貴重な学びの一時となりました。 |